こんにちは、ストロング宮迫です。
さて、前々回のここでコーチの話を取り上げました。
これと合わせて親の方に注意深く見ていただきたいのがマラソンの高橋尚子選手について。
高橋選手は先日引退を発表しました。
※この毎日親技は2008年11月2日に配信したものです
2000年シドニー五輪陸上女子マラソン金メダルの高橋尚子選手(36)が28日、東京都内で会見し、競技生活からの引退を正式表明した。
理由について高橋は「練習でどう試行錯誤しても、全力でやっても、納得いく走りができなくなった。肉体的、精神的に限界を感じた」
高橋選手の名前は日本人なら誰でも知っているほど有名ですが、言うまでもなく彼女は「とてつもないランナー」です。
どれくらい「とてつもない」のか?
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、
高橋選手のマラソン全戦績は、
1997年 7位 2時間31分32秒 初マラソン
1998年 優勝 2時間25分48秒 当時の日本最高記録
1998年 優勝 2時間21分47秒 当時の日本最高記録
2000年 優勝 2時間22分19秒 大会記録
2000年 優勝 2時間23分14秒 ★金メダル獲得・五輪記録
2001年 優勝 2時間19分46秒 当時の世界最高記録
2002年 優勝 2時間21分49秒 マラソン6連覇
2003年 2位 2時間27分21秒2005年小出監督との師弟関係を解消し「チームQ」を結成
2005年 優勝 2時間24分39秒 2大会ぶりマラソン優勝
2006年 3位 2時間31分22秒
2008年 27位 2時間44分18秒 現役最後のレース
走る「記録更新者」ですねえ…(◎_◎)
これだけでもすごさはわかっていただけると思いますが、もう少し付け加えておくと、
高橋の五輪での金メダル獲得は、日本陸上界64年ぶり戦後初の快挙で、かつ日本女子陸上界においては史上初の快挙・・・
またゴールタイムの2時間23分14秒は、五輪最高記録である(この 記録は今もなお破られていない)。
これらの功績により国民栄誉賞を受賞。
2001年9月30日のベルリンマラソンでは、・・・前世界記録を1分近くの更新・・・高橋の世界記録樹立での優勝は、女性初のサブ20達成での歴史的快挙とともに、日本女子マラソンがついに世界記録を更新した瞬間でもあった。
と歴史的快挙の連続だった高橋選手。
その記録ずくめの高橋選手の現役生活において、ストロングが大いに興味をそそられる出来事は、やはり
2005年5月、リクルート時代からの約10年に及ぶ小出義雄さんとの師弟関係を解消
したことです。
皆さんにもここに注目していただきたい!
高橋選手は2005年5月に師弟関係を解消して、トレーナー、調理師、練習パートナーらと「チームQ]を結成。
「指導者はおらず、不安があれば話し合った」チームQは、結成後すぐに前回終盤で失速して2位に敗れた同じ東京国際女子マラソンを優勝で飾り、雪辱しました。
2005年11月21日朝日新聞
長年の師弟関係を築いてきた佐倉アスリート倶楽部代表の小出義雄さんは、16キロ地点のJR品川駅近くで見守った。
自分のもとを離れて高橋選手が臨んだ初マラソン。
「10年も一緒にやってきたから、放っておいてもいいタイムが出るよ。(自立は)精神的にはよかったと思う」
とはいえ、今まで「小出監督にすべてお任せだった」高橋選手にとっては、全くの手探りのレース。
支えたのは「チームQ」のメンバーだ。
・・・ゴールで待ち受けた3人と抱き合った高橋選手は「若いチームで試行錯誤して勝ち取った。(チームの)きずなが私を勝たせてくれました」と話した。
しかし、この優勝のあとからは先の記録を見ていただいてもわかる通り、ケガやアクシデントも重なり、オリンピック出場も逃し、そして先日の引退となりました。
「コーチと選手」の関係を「親と子」の関係に置き換えて「自立」について考えた前々回のメルマガに続いて、このホットな話題をもう少し考えてみたいと思います。
高橋選手の「師弟関係の解消」と「チームQの結成」については、ストロングは実に興味があって、報道される記事をこれまでずっと追ってきました。
2006年12月13日サンスポ「小出監督、語る」
僕は今、(佐倉アスリート倶楽部の)高橋克彦コーチに『もっと選手を怒れ。どんどん厳しくやれ』と言っている。
コーチが選手と一緒に食事をしたりするのもよくない。
選手と仲良くやるのではなく、怒れるコーチにならないと勝負事には勝てない。
Qちゃんは鍛え方が足りなかった。
大会前日の練習で、チームQの仲間と和気あいあいと走っていたのをみたとき、これはダメだと思った。
本番前に練習で「素人」と走っているようではダメ。
しかも、集中力を高めないといけないはずの大事な練習で…。
いろいろな経験があって、厳しいことを言えるコーチが周りにいなかったんだと思うよ。
厳しいですねえ・・・
しかし、それも高橋選手の能力を知っているからこそ、もっと高いレベルでやりなさい!という気持ちの表れだったんじゃないか。
今になってはそう思えます。
さあ、小出監督からストロングも含めて皆さんにも考える材料を与えられましたよ。
身の周りの「勉強における親子関係」「子供の自立」について、一緒に考えていきましょう。
経緯はともかく10年間の「縦の」師弟関係を解消して「横の」関係のチームQを結成した高橋選手。
小出監督は、それを
「(自立は)精神的にはよかったと思う」
と言った。
勉強においても、一般的に親は子供に早く自立して
「自分で考えて、自分で計画して、積極的に勉強してほしい」
と望みます。
そういう相談が絶えないですから・・・・
しかし、ストロングは自立を望むならまずは親がそばについて成果を出してから。
成果が出ていくことが実感できたら子供もある程度自覚を持ってやり始めるし、それが自立を促すことにもなるだろうとこれまで話してきました。
下品な例えで言うと、偏差値30の子供よりは偏差値70の子供のほうが自覚もあり、なにをするのかもわかっており、勉強のやり方も理解しているということです。
だからまず親が成果を出してあげてねと。
そしてその成果の出たやり方を子供に学ばせてねと言ってきたわけです。
自立はそれからよ!と。
自立を促すためにも親が協力してやって成果を出す。
そこまでは親が積極的に、どんどん手伝ってやれ、子供は勉強をすることだけに集中させろ!
こうも言ってきました。
高橋選手も
今まで小出監督にすべてお任せだった
わけですが師弟関係の解消で特定のコーチを付けない代わりに私生活から練習メニューまですべてを一人でしなければならなくなったわけです。
つまり、選手であるとともに自らの監督にもなったということです。
そのあたりの苦労について、いくつも報道されました。
勉強面での「我が子の自立」を念頭に読んでみてください。
2006年11月20日サンケイスポーツ
昨年5月、小出義雄氏の下を離れ、トレーナーらと4人でチームQを結成。
昨年は同じ東京で復活優勝を遂げたが、真価が問われた2年目は惨敗した。
ボルダーでは5年分の練習日誌をめくり、自分でメニューを組み立てた。
トラック練習も6年ぶりに取り入れ、未経験の4500メートルの高地を走った。
「体の声を聞きながら走った」が、もう34歳。
若かった頃の勢いはない。
今まで必要なかった練習後のアイシングも行うようにしたが「監督兼任」故に思うようなメニューが組めなかったのも事実。
最終調整に失敗したことが致命傷となった。
2008年10月29日サンケイスポーツ
小出氏は「あと4、5年はできたよな…」と続けた。
3年前に自らの元を離れた高橋は、その後思うような成績を残せなかった。
自立した愛弟子にエールを送りつつ、全盛期からほど遠い姿に悔しさを覚えていたのも事実だ。
さらに小出監督は衝撃的なコメントを発しています。
2008年10月29日 スポーツ報知
小出代表は高橋が会見で「完全燃焼」を強調したことについて、
「(練習の)やり方がわからない中での完全燃焼じゃないかな」。
指導者を置かない独立後の練習法に今さらながら疑問を投げかけ、残念そうだった。
ええーーーーーー!?
金メダリストが「練習のやり方がわからない」って!?
たとえば、こんなことありませんか?
周りから見ていても子供はメチャクチャ頑張っている。本人も完全燃焼したと思っている。
でも、よくよく検証していくと、頑張ってはいるけれど、実は「イイやり方」ではやっていない!なんて・・・
勉強では本当にそういうことがよくあります。
「イイやり方」でなくても成果は出ます。
ただ効率が悪く、ものすごく時間がかかったりする。
時間がかかるから子供はものすごく頑張った気になっているけど、成績がイイ子はもっとラクに短時間でこなしていることも。
だから、ストロングは、まず勉強量を増やす前に「やり方」をきちんと検証して、今までと同し時間の勉強で効率的にやって成果を上げられないかを考えてみてくださいと言っています。
また1日30分という短時間の勉強をやってみて30分フルに使えるようになってから勉強時間を延ばしたほうがいいですよ!ともお話してきました。
違う世界とはいえ、ハイレベルな金メダリストにそれが起こっているということはボクらの周りでは日常茶飯事で起こっているということでしょう。
一人で全部の役割を担うということの難しさ。
しかし、ストロングは思うんです。
すべてを一人で担うのが果たして「自立」なんだろうかと。
親が指示しなくても自分で考えて勉強するものを決め、試験の前には自分でテンションを高められ、自覚を持って緊張感を持って一生懸命勉強する。
息抜きが必要であれば、それが自分でちゃんと取れ、息抜きと勉強のけじめを誰がいなくてもきちんとできる。
それができることが果たして自立なんだろうか?
そんなことを子供に求めるべきなんだろうか?
求めなきゃいけないのか?
それが完成系、理想形なのか?
どうお考えですか?
子供には「自立してほしい」と望むわけですが、あなたが望んでいる「自立」とはいったいどのレベルで、どういうイメージですか?
もともと高橋選手がやろうとしていたことかどうかはわかりませんが、結果的には高橋選手は「自立」して「選手兼監督」になった。
親もそうしたものを目指していくべきなんだろうか?
どうですか?
あえて言えば、逆の言い方もできると思うのです。
どういうことか?
実は、水泳の北島選手や高橋選手のような金メダリストのハイレベルな世界こそは役割分担が必要なのではないか。
レベルが低い世界での競争なら「選手兼監督」でも、そこそこイイ成績が残せる。
でも、もし最難関校を目指すとすれば、レベルが高いがゆえに一人ですべての役割を担う「選手兼監督」では勝負できないのではないかということなのです。
ですから、
あなたのお子さんが挑もうとしている世界のレベル
お子さんに望む自立のレベル
これらをもう一度考えて定義しなおして、これから子供と接していく必要を改めて強く感じています。
あなたにとって「子供の自立」とは何を意味しますか?
それともう1つ、今回のことで考えなければならないことがあります。
2008年10月28日サンケイスポーツ
36歳。一般的に年齢を重ねれば、練習で疲労した肉体の回復具合は低下していく。
それだけに、練習内容は日々の体の状態を見た臨機応変な対応が必要にもなってくる。
だが、05年5月に10年に及んだ小出氏との師弟関係を解消し、独立した高橋はその後、特定のコーチを持たずに競技を続けてきた。
自らを「客観的に見る」という点で、限界を指摘する声も聞かれた。
「自らを客観的に見る」ことができれば理想なのですが、これがなかなか難しい。
金メダリストにも難しいとすれば、凡人にはもっと難しいと思います。
だって自分が周りにどう見えているかなんて「自分には見えない」わけですから。
記事にある
◆その日の状態に応じた臨機応変な練習メニュー
◆自らを「客観的にみる」
などは勉強面においても非常に大事なことは北島選手のことで触れたとおりで、ここでも似たような話がでていることに注意を払っておいてください。
オリンピックなどのレベルの高い大会では、やはり選手は競技に集中して、そのことだけを考えてやっていかないと難しいのかもしれません。
でもオリンピックだけではなく、子供たちにとって受験はまさに「オリンピック」という考え方もできます。
・体調管理
・各科目の勉強配分
・日々の勉強の管理進捗
・弱点補強
・志望校の傾向と対策
・志望校までのステップアップの軌跡
・合否判定模試結果についてのフォロー
・精神的な不安の解消
・気晴らし
こうして思いつくままパパっとあげていっても、考える項目がたくさんあります。
もちろん考えるだけでなく、勉強に没頭しなければならない!。
とすれば、これを子供一人にやらせるのは難しい。
だからこそ、
◆塾や家庭教師が担ってくれる部分
◆学校が担ってくれる
◆親や家庭が担う部分
◆子供が担う部分
これらが明確でないと穴が出ます。
また、明確でないとそれぞれが余計なことをしてしまう場合も出てきます。
もしお子さんがあるレベル以上の受験(オリンピック)に臨むなら、親(コーチ)はそれ相応の意識で臨まないと結果は厳しいものになるはずです。
それ相応の意識で臨んでも思うような結果が出ないわけですからね。
まあ、金メダルみたいに「たった1人のみ合格」という学校はないので、やっぱり金メダルなんかよりはラクかもです。
ご家庭では、それぞれの役割分担は完了していますか?
穴はないですか?
親であるあなたはなにをやり、子供にはなにをやらせますか?
切り口はいろいろとあると思いますので、せっかくですから「自立」をキーワードに「高橋選手」を題材に考えてみてください。
メルマガでストロングがこれまで言ってきた
やり方を教えて、成果を出して、うまみを知って、自立させる
という結論もありです!
が一方で、全く逆の
やり方を教えて、成果を出して、うまみを知って、レベルの高い世界に進む。もっともっと役割分担を細かく明確にしてさらに上の世界を目指していく
なんて結論になる場合だってありえます。
ハイレベルなプロの世界に世界になればなるほど、緻密なものがそれぞれの分野で求められるわけですからね。
どういう結論になってもそれはご家庭次第!
それは各家庭で微妙に違ってくるものですからね。
最後に、2008年10月29日のデイリースポーツに小出監督のこんなコメントが載っていたので紹介します。
今後について、小出代表は、「『マラソンは楽しい』って教えることが、僕とQちゃんのスタートだった。
Qちゃんなら『こうすれば完走できる』って教えてあげられる」。
師弟関係復活へ、最後のラブコールも忘れていなかった。
引退して一市民ランナーになった高橋選手が、かつての最大の理解者で「客観的な目」を持つコーチと再会。
そして、その「普通の市民ランナー」が2時間20分台出しちゃったよ!なんていうのも夢があっていいでしょ?
そのときはまたメルマガで書こうと思います。
高橋尚子選手、ホントお疲れさまでした!
しばしゆっくりなさいませ!