『勝利』 261ページ
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なんとも残念なことだ、と私は思った。

彼は実際にある程度の技量を持っているが、それに見合った進歩を遂げることは絶対にない。

傲慢さと、彼が持ってはいない自分の技量に対する過信が、せっかくの技量を押しつぶしてしまう。

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『勝利』
ディック・フランシス著
菊池光訳

馬が脚をもつれさせたのは、レースの最後の障害だった。七馬身の差をつけて先頭を走っていた馬が集中力を失い、障害にぶつかって騎手の上で宙返りを打ったのだ。半トンもの馬体は仰向けになって、下敷きになった男の胸郭を押しつぶした。

友人の騎手マーティンがレース中の事故で死亡し、ガラス工芸家ローガンの人生は一変した。マーティンは死の直前、一本のビデオテープをローガンに託そうとしていた。そのテープには莫大な価値があると言い残して・・・

やがて、正体不明の連中がローガンを襲撃する。狙いは問題のビデオテープ。だがそのテープは彼の手に渡って間もなく、何者かに盗み出されていたのだ。

自らの身を護るため、ローガンはテープの秘密を追う決意を固める。ビデオテープに秘められた莫大な価値とは? そしてテープはいまどこに? 永遠の人気を誇る巨匠の、練達の技が冴える。

『勝利』 55ページ

ガラス吹き職人が一般的に傲慢なのは、主として技術を会得するのが非常に困難なためである。

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ヒッコリイはすでにある程度の傲慢さを示しているが、優れた職人になったらその点は見過ごしてやらなければならない。私自身は、おじ(この上なく傲慢な人物)が、一にも二にも三にも謙虚さを身につけることを要求し、私が彼の言う「気取り」を完全に振り払うまでは窯に近寄ることをしくれなかった。

彼の死後、その「気取り」が折に触れて頭をもたげ、それに気付くたびに自分を戒めた。完全になくすのに十年はかかったと思うが、一生油断はできないにちがいない。

『勝利』 205ページ

教授によれば、私が訊いていない質問があり、正しい質問をしなければ正しい答えを得ることはできないではないか?

しかし、正しい質問とはなんだ?

それに、誰に訊くべきなのか?

『勝利』 103ページ

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・・・脇のドアの錠を開けて入ると、ローガン一家、父、母、二人の息子、がここで豊かに暮らしていた歳月の間、この家が、それぞれに対して異なった形ではあったが、みんなの心に安らぎを与えてくれていたような気がした。

残っているのは私一人だが、十ある部屋には鮮明な思い出が満ちており、もっと小さくて、もっと似合った家を探そうとしたことはない。

場合によっては、いずれそのうちに探すかもしれない。ここに住んでいる間は、家はあらゆる意味でいかにも我が家という感じがする。

私にとっての我が家であり、かつてここに住んでいた者全員の我が家だ。

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『勝利』 220ページ

その間、私は完全に満足感に満ちていた・・・だが十年後に同じ満足感を抱くだろうか? それに、彼女も? 彼女が体を動かして目を開け、微笑した時、十年間は問題ではなくなった。

人は「今」に生きていて、その今は永続的な道連れであり、一分一分、存在し変化する。いつの場合でも重要なのは「今」なのだ。

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『勝利』 151ページ

どの分野であれ、多くの芸術家と同じように、私は、自分が専門分野で到達したレヴェルは自分自身に対してしか認めることができない。

それに、自分が創造するものを世間に吹聴することなく生み出すのは、思い上がりを禁止したロンおじのお陰だ。

『勝利』
訳者あとがき 菊池光

ディック・フランシスとメアリ夫人のこと

1966年頃であったろうか、「ニューヨーク・タイムズ」の書評し誌でアンソニー・バウチャーがディック・フランシスの作品を激賞していた。さっそく、在米の友人に最初の三作を送ってもらって読み、大いに感心した。

その頃、早川書房の常磐新平さんと会った時、なにか面白い本はないか、と訊かれ、ディック・フランシスの作品の話をすると、こちらも注目していて新しい版権の手配をしている、ということだった。三作の中でどれが一番面白いか、と訊かれ、自分は第三作の『興奮』と答え、それでは読者へのインパクトを考え、それを最初にやってもらおう、ということになった。

かくして1967年に、当時はポケミスから『興奮』が刊行された。まだ駆け出しの頃だったが、実に楽しく訳した記憶が、今も生々しい。これが、ディック・フランシスとの出会いであった。

以来、ディック・フランシスの作品を、自伝も含めて本書で四十冊訳したことになる。五冊目くらしからは、年に一冊の作品を訳してきたわけで、ディック・フランシスの作品と共に齢を重ねてきた感が強い。よく、訳す方はあまり苦労はないが、書く方はたいへんだろうな、と思ったものだ。

その理由の一つは、全作品を通じて、主人公がなんらかの形で競馬と関わりがある点こそ変わらないが、作品ごとに主人公の職業(あるいは、社会的地位)が異なっている点だ。

何回か登場する同一主人公は、たしか『大穴』『利腕』『敵手』のシッド・ハレーと、『侵入』と『連闘』に登場した障害騎手キット・フィールディングだけである。例えば、第一作『本命』のアラン・ヨークは貿易会社の支店長、第二作『度胸』のロバート・フィンは新鋭騎手、第三作『興奮』のダニエル・ロークはオーストラリアの種馬牧場主で、請われてイギリスの諜報部長をつとめる、といった具合だ。そのほかに、映画俳優、玩具製造業者、画家、会計士兼アマチュア騎手、ワイン商、さらにこの作品の「ガラス吹き」、と実に様々である。

もっとも驚くのは、それぞれの職業の実体、特徴が精密、正確に描写されている点だ。それが、こちらに縁のない職業だと、理解、訳語決定などで訳すのが一苦労の場合も多々あったが、裏を返せば、その苦労が訳す上での励み、楽しみであったことは否めない。たいへん失礼な言い方だが、義務教育しか受けていない元騎手がどうしてこのようなことを知っているのだろう、リサーチがたいへんだろうな、と考えたりした。

もちろん、ディック・フランシス自身の経歴も多彩で、十五歳で義務教育を終え、空軍整備兵、パイロット、アマチュアからプロの騎手、騎手引退後は新聞コラムエストで、最後は作家である。空軍での経験は、競走馬空輸会社が舞台の『飛越』、エア・タクシイのパイロットが主人公である『混戦』に活かされ、自身のアマチュア騎手時代の体験は、いくつもの作品に出てくる異なった職業を持つアマチュア騎手の生活に取り入れられている。

引退したとき、いろいろな職への勧誘があったが、彼は「サンデイ・イクスプレス」からの申し入れを受けた。記事を四回、場合によってはもう少し、新聞社のスタッフが書いてディック・フランシスの名前で掲載するという。彼が、自分で書いたらどうだろう、と訊き、いいだろう、書いてみてくれ、ということになった。このコラムがたいへん好評で十六年続いた。

「書くことについて私が知っていることは、すべて新聞社の厳しい仕事をして学んだもので、「サンデイ・イクスプレス」に感謝しなければならない」と彼は自伝で述べている。

その後、ある機会に、リサーチは主として奥さんのメアリさんが担当していることがわかった。
1988年11月に、早川書房の招きで、ディック・フランシス夫妻が十日間日本に滞在した時、通訳を兼ねて付いていた。日本を舞台にした作品の下調べという感じだった(しかし、日本を舞台にした作品は、まだ現れていない)。その来日中に、リサーチはメアリが担当している、とフランシスが言っていた。

そのメアリさんが健康を損なって、結局、夫妻はは冬の間バハマに住んで、夏はイギリスに帰っていたようだが、昨年、メアリさんがついに亡くなった。ディック・フランシスは優しい愛妻家なので、精神的に大きな痛手を受けているにちがいない。伝聞するところでは、彼は筆を擱くつもりでいるようだが、なにとぞその痛手から立ち直って、今後も作品を送り出してくれることを心から祈ってやまない。

2001年4月
菊池光(きくちみつ)

翻訳家の菊池光さんは2006年6月に、ディック・フランシスは2010年2月に亡くなられました。

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うれしい報告

『成績がったよ!報告』

小4 てるっちさん

教科 = 国語・算数
テスト名 = 8/27実施の塾月例テスト

国語7月57点→8月78点(+21点)
算数7月57点→8月74点(+17点)

ストロング様、いつもお世話になっております。

まずは塾のテストで成績を上げることを目標に、この夏休み親子3人で取り組んでまいりました。

今日が8月テストだったのですが、予想以上に点数が上がったことに正直驚いています。

以下、8月の取組み内容を整理します。

鉄則の中では、「家族全体で協力」「日々チェック」「徹底してやる!」と「時間を計って短期集中」に重点を置き、我々なりに作戦を練り実行しました。

(省略)・・・以上、夏休みで時間に余裕があったからこそできた面もあるのですが、たちまち成果が出た事を親子共々嬉しく思っております。

息子に「今日のテストは、先月までと比べてどうだった?」と尋ねると、「問題のレベルが下がったような気がする。」と答えました(^0^)

私は間髪入れず、「それは問題のレベルが下がったんじゃない!あんたのレベルが上がったんじゃー!!」と褒めまくってやりました。

すると息子は「次は90点取りたいなぁ~…」とぼそっと一言。成績UPに欲が出てきたようです。

ちなみに、塾の先生からは「おまえは双子じゃったんかぁ??」と言われたそうです(先月までとは別人?/笑)

学校が始まると時間に制約も出てきますし、私も仕事があるため思うようにいかない点も多々ありますが、夫と協力し、引き続きトライ&エラーを繰り返しながら息子の勉強に併走していきたいと思います。

「問題のレベルが下がったような気がする」この言葉こそが勉強の成果ですね。

9月以降は夏休みほど時間が取れなくなると思いますが、こうすれば「成果が出る」「点数が上がる」という体験をしたことは、子供には大きいです。

ぜひ9月以降は優先順位をキッチリと付け、高い優先順位のものから撃破していってください。

2回連続で上げる!これが本命ですぞ!!

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