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塾業界の現状から親は何をすべきか?(1) しばらく前になりますが、塾の倒産のニュースが報じられました。 ストロングにいただく相談にも「倒産」または「倒産の噂がある」なんていうのもあります。 ただストロングに「どこが倒産しそうか?」「○○塾は大丈夫か?」と聞かれても残念ながら答えることができません。 そこで、今までしたことがない試みですが、今回と次回のメルマガで2回にわたって、この半年間で報道された塾に関する記事を追ってみたいと思います。 そうすることで、慌しい動きを見せている塾業界の状況が少しは見えてくるのではないか。 それを期待して皆さんが知っているニュースを紹介しながら、今どういうことになっているのかを一緒に考えていきましょう。 かなり長いですが、できるだけ読みやすく整理しますので、お付き合いください。 大事な我が子を預ける会社やこれから身をゆだねる環境についてぜひ知っておいていただいきたい内容です。 今回紹介する記事は、たいていは大手でかつ上場している学習塾の記事になります。 地域によっては、馴染みがない塾と感じる方もいるでしょう。 が、少子化を迎えて塾業界がどういう状況になっているのかの大きな流れと枠組みを感じ取っていただくのが目的ですから、どうぞご容赦ください。 では、まず報じられた倒産の記事から。 2007年6月27日 読売新聞 学習塾アンビシャスが閉鎖 経営不振で破産手続き開始 高校生らを対象にした学習塾「未来工房 アンビシャス」を全国展開する「グリーン・フィールド」(東京都渋谷区、森下広一社長)が全国の教室を突然閉鎖し、破産手続きを進めていることが27日、分かった。 破産手続きを受任した弁護士の25日付の通知によると、同社は「中途解約の増加等を原因とする売り上げ低迷により経営が急激に悪化し、多額の債務を抱えた」とし「やむなく破産手続き開始の申し立てをすることとなりました」と説明している。 多くの生徒がすでに多額の授業料を支払っているとみられるが、弁護士の事務所は「現在破産の手続きを進めており、現段階では何も言えない」としている。 民間の調査会社や同社のホームページによると、同社は1981年に設立。高校生を中心にした学習塾16校を北海道、東京、千葉、長野、愛知、石川、大阪、広島で展開している。 続いて、 2007年8月11日 読売新聞 大学受験予備校・明聖アカデミー、7教室閉鎖し破産手続き大学受験予備校の明聖アカデミー(本社・東京都文京区)が業績不振のため全国7カ所の教室を閉鎖し、自己破産の手続きを進めていることが11日、わかった。 生徒数は明らかにしていないが、代理人の弁護士によると、授業料の返還も難しい見通しという。競争激化で利益が減ったことや、借入金返済などで資金繰りが悪化し、10日、破産手続に入ることを決めた。教室は名古屋、岐阜、津、三重・四日市のほか、東京、京都、浜松にある。 民間の信用調査会社によると、同社は1990年設立。資本金3000万円。2005年12月期の売上高は約18億円。 三重県四日市市鵜の森の四日市校では、玄関のドアに張られた「自己破産のお知らせ」を見た生徒の母親(45)が「ほかの予備校に行くといっても、どうしていいのか」と困惑した表情で話した。同県鈴鹿市の高校3年の女子生徒(18)は「受験勉強をする場所がなくなった。高い授業料を払っていたのに」と怒りが収まらない様子だった。 高い授業料を一括で払った上で受験を前に倒産ですから、なんともエグイ話です。 2つの記事は、主に高校生を対象にした塾ということのようです。 塾というのは、実は参入する際のコストが他業種に比べて比較的かからない業種です。 仕入れもほとんどいりませんし、費用の主なものは家賃と人件費。魅力なのは、売り上げは常に先払いで現金回収できます。 なので、非常に参入しやすいですし、言い方は悪いですが、お手軽に始められる業種といえるでしょう。 もともと新規参入がしやすい業種のうえに、最近ではコンビニと同じようにフランチャイズシステムを取っているところもあります。 よって、非常に小規模な塾が乱立しているのが塾業界。 ちなみに、現在株式を上場している塾の売上高順位は、こんなふうになっています。 → 京進IR情報より |
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平成17年度売上高順 単位:百万円 1 (株)栄光 39,114 業界トップの栄光の売り上げが390億円。19位が41億円。 ここに挙がっているのは上場各社なので、売上高で考えると、ここに日能研、佐鳴予備校、中萬学院、鴎州塾などが入ってきます。 さて、そんな業界の現在の状況はというと、少子化による大学全入時代といわれています。 実際の数字で見てみると、19歳以下の子供の数は、 1996年 450万人2006年 390万人以下
と、この11年間で19歳以下の子供の数は、約60万人、割合でいえば、14%の減少。 確実に対象になる子供が減っているわけですから、生徒の奪い合いは激化するという状況です。 当然ながら、子供の数の減少は実際に塾に通う子供の数も減る。 すなわち、塾業界市場規模も減少することになります。 矢野経済研究所によれば、塾業界市場規模は、 2002年度 9920億円2006年度 9550億円
このうち、大まかに35%程度の3000億円ほどが個別指導の市場になります。 塾業界の市場規模は、この5年で400億円の減少です。 400億円というと、業界の売上高1位の栄光の売上高が390億円ほどですから、5年間で栄光がなくなってしまった! それに匹敵する数字です。 でも、子供の数が減った割合ほどに塾業界の市場規模は減っていないって!? あなたはすばらしい! 理解しながら読み進めてくれているんですね! ストロング、泣いちゃいます…(;_;) そうなんです。子供の数ほど、市場規模は減少していない。 矢野経済研究所の分析によれば、 学生人口の減少で市場の縮小傾向が続いているが、中学受験マーケットが好調で、個別指導塾も拡大基調にあることから、縮小は最小限に留まった。
生徒数は大幅に減っているけど、市場規模は微減。 ということは、塾に通う方が塾に払った単価は5年前に比べて多くなったということです。 塾側の立場でいえば、つまり、 生徒一人当たりの単価が上がった となるわけです。 生徒一人当たりの単価が上がった理由として、公立不信からくる中学受験者の増加と個別指導塾の拡大で説明できるでしょう。中学受験者と個別指導塾の単価は、例えば、公立高校受験者の単価よりもはるかに高い。たくさんお金を払うわけです。 また、中学受験者については、すでに2007年度に260校近く設立された公立中高一貫校の影響もあるでしょう。 今まで塾に行かなかった層も塾に行ったり、講習を受けたり、テスト受けたりと。新たな層の掘り起こしもあった。 さらにいうと、この数年間で小中規模の塾が淘汰されたといえるかもしれません。 他の業種でもそうでしょうが、塾は生徒が0人になったら、倒産するわけではありません。 各塾には、維持費と人件費をまかなうための生徒数の分岐点があります。 たった1人でやっているのであれば、生徒数が10人いればなんとか続けられるという場合もあるでしょう。 分岐点の生徒数を下回れば、経営は苦しくなる。何年か続いて、蓄積しているものがなくなれば、バンザイとなる。 その分岐点が200人なのか、50人なのかは塾の規模によりますが、生徒が0人になったから手を挙げるわけではなく、分岐点を下回り続けたらバンザイとなるわけです。 子供の数が減って、対象になる生徒の数は減っているわけですが、競争の結果、バンザイした中小規模の生徒の受け皿は、多くの教室を展開する大手の学習塾になります。 そうすると、この厳しい市場環境の中で、大手の学習塾の生徒数は実は増えている現象が起こるわけですね。 極端に言えば、中小規模の塾が淘汰され、少なくなった市場を大手が分け合う図式となるわけです。 経営が成り立つ生徒数、その分岐点をめぐっての激しい戦いの一例と挙げられるのが、以下の記事です。 2007年7月24日 河北新報社 夏期講習0円戦争突入 仙台圏学習塾、生徒争奪熱く 仙台圏の学習塾が夏期講習の無料化合戦を繰り広げている。 仙台市に進出した秀英予備校(静岡市)が教材費を除いてゼロ円にすることを決めたのが引き金。 あすなろ学院(仙台市)など地元勢も教材費以外は無料にして応戦している。少子化で塾の経営環境が厳しさを増す中、塾生の争奪競争は過熱する一方だ。 秀英予備校は24日、仙台、塩釜、名取の3市に8校を開校する。 講習は小学5〜中学3年生を対象に8〜10日間行われ、1000〜3150円のテキスト代以外はただ。ゼロ円講習で受講生を呼び込み、夏休み明けの有料の通常授業に誘導する「損して得取れ作戦」で、同校は「100万人都市仙台は魅力的な市場。無料化でも採算が合うと判断した」と自信を見せる。学院の井上修史専務は「無料化だけでなく、地元で長年培った経験を生かし、きめ細かいサービスで勝負する」と対抗心を燃やす。仙台進学プラザも無料化に踏み切る。秀英予備校が北海道に進出した時、低価格競争に乗らなかった地元塾が軒並み経営危機に陥り、「同じ轍(てつ)は踏みたくない」(阿部孝治代表)という。 集団授業で行う塾の場合、30人入れる教室があったとします。 そこに生徒が10人いようが、30人いようが先生の人件費も維持費も変わらないわけです。 ならば一人でも多くの生徒がいたほうが経営という面から見れば、当然ながらイイ。 夏期講習をタダにするには資金という体力がいりますが、そこを我慢して一定の生徒数を確保すれば、そして、引き続き塾に通ってくれれば、十分計算が成り立つんですね。 記事にもありましたが、この戦いは体力勝負になるので、どうしても資金が豊富な大手が有利になります。まさにガチンコのつぶしあいが見て取れるわけです。 事実、大手は市場が縮小傾向にもかかわらず、絶好調! 2005/07/20 日本経済新聞 学習塾・予備校20社中17社が経営損益改善 今期最高益、大手に集中 最高益を見込むのは栄光、ナガセ、市進、東京個別指導学院他。中でもリソー教育、東京個別は個別指導教室の運営がけん引する。 これは今から2年前の記事ですが、少子化の中、実は塾業界、特に大手の塾は絶好調だったのです。 そして、2006年度も相変わらず好調だった。 2007年8月10日 埼玉新聞 学習塾全国20社06年度収入 栄光がトップ 帝国データバンク大宮支店がまとめた学習塾動向調査によると、全国上場学習塾20社の2006年度の収入高(連結)トップは「栄光ゼミナール」などを展開している東証二部上場の栄光(さいたま市南区)で、407億円、前年度比4・2%増だった。 少子化が進む中でも大手は業績を伸ばしており、業者間の格差が広がりつつあるとしている。栄光は全国に300を超す教室を展開。生徒数は期中平均で68,000人、前年度比4・7%増となり過去最高を記録している。 2位は大学受験予備校「東進ハイスクール」などを展開しているジャスダック上場のナガセ(東京都武蔵野市)。ナガセは250億円、前年度比28・6%増。2006年10月に中学校受験の四谷大塚(東京都中野区)を買収し連結子会社としている。 3位はジャスダック上場の市進(千葉県市川市)で199億円、前年度比0・9%増だった。 全国の主な上場学習塾20社の2006年度の連結収入高は2438億7300万円、前年度比6・4%増で、連結経常利益は255億円、同4・4%増となった。 20社中17社が増収、3社が減収。19社が経常黒字で13社が増益、6社が減益だった。 もう高度経済成長時代!?と見間違うほど伸びまくってる。 それを受けて、2007年度の今年の年度初めにはかなりの強気な数字が並んでいました。 2007/02/14 日経産業新聞 人気の高い有力学習塾の業績は軒並み好調。早稲田アカデミーの07年3月期の単独経常利益は前期比69%増と大幅な経常最高益を見込む。 中学から大学受験まで展開する市進も、中学受験部門の好調で、07年2月期の連結経常利益が同24%増え、経常最高益を更新する見通しだ。 今の時代にすごい数字です!! 年々伸びてさらにそこからの積み上げの数字ですからね。 しかし、ふたを開けてみると、 2007年8月30日 NIKKEI NET 早稲田アカデミーは二十九日、今期から始める連結決算で2007年9月中間期の営業利益が期初に想定していた六億円から二億円減額した四億円になる見通しだと発表した。 生徒数は前年同期比で約一割を上回って推移しているものの、期初の計画と比べると二%低い水準となったため。 売上高も期初予想の七十九億円から七十七億円へ引き下げ、純利益も同三億円から二億円とした。前期に活発だった小学生による中学受験が今期も継続すると見込んだが、沈静化したため目算が狂った。一方で講師代といった人件費などの固定費は計画並みとなったことが収益圧迫につながった。
2007年10月09日 市進学院は、大学入試におけるAO入試や推薦入学の増加等の情勢の変化、同業他社間における競争の激化により、特に高校部門(市進予備校部門)を中心に、生徒数の減少傾向が続いていると発表しました。 高校部門(市進予備校部門)を中心とした集客の厳しさによる収益の伸び悩みは、下期も上期と同様の傾向が続く見込みとのこと。 これらをもとに、市進学院では、2008年2月期連結純利益見通しを従来の7.3億円から4.3億円に下方修正しています。 ここにきて、大手の早稲田アカデミーと市進が業績の下方修正を行ったわけです。 まあ、それでも利益はそこそこ出ているわけですから、「絶好調」が「好調」になった程度でしょうが。 ただ、今年の業績の一服感は、早稲アカと市進だけではないんです。 2007年5年31日 『週刊東洋経済』6月2日号 ベネッセ、学研など大資本が相次ぎ塾を買収。 塾業界の再編が加速している。通信教育最大手のベネッセコーポレーションが首都圏を地盤に展開する東京個別指導学院(東京個別)のTOBを発表し、東京個別も賛同の意を表明した。 ベネッセでは塾経営を「進研ゼミ」に次ぐ柱と位置づけ、昨年秋には大学受験のお茶の水ゼミナールを買収している。東京個別の子会社化は進研ゼミの中核顧客(小中学生)の受け皿になる。 足元、4月の進研ゼミ会員数は391万人と4期ぶりに減少しており「小中の高学年になると、進研ゼミをやめて塾に行く生徒が増える。そこをグループで取り込みたい」(同社幹部)。 一方、東京個別も昨年6月から11カ月連続で生徒数が前年を割り込んでいる。塾生1人当たりの授業コマ数を増やして客単価を上げ、何とか増収を確保する苦しい展開だ。同社の馬場信治社長は塾に「個別指導」の手法を導入した先駆者として知られる。独立心が強いとみられていただけに「ベネッセ傘下入り」のニュースに意外感を持つ塾関係者は多い。 だが、昨年秋に馬場社長のほうから提携話を持ちかけていた。 実はフランチャイズで個別指導を展開する明光ネットワークジャパンの第2位株主(保有比率12%強)が東京個別であり、今後同社にもベネッセの影響力が及ぶ。競合する学習研究社も桐杏学園(東京)、あすなろ学院(仙台)、照和学館(北九州)と相次いで塾を買収。 少子化を背景に「子供の奪い合い」はさらに過熱しそうだ。(書き手:吉田正志) 東京個別指導学院は、「昨年6月から11カ月連続で生徒数が前年を割り」んでおり、買収した進研ゼミも、会員数が4年ぶりに減少。 今後どうなっていくかはわかりませんが、これから塾業界は、大手同士の生き残りをかけたまさに少子化戦国時代になってきているといえるかもしれません。 そういう状況なんだと。 そこで出てくるキーワードが悪い言い方でいえば「子供の奪い合い」。カッコイイ言い方でいえば、「生徒の囲い込み」です。
これはどういうことか? ストロングの解釈では、こうです。 塾の経営にとって最も効率がよい経営とは、継続。 継続とは、小5から小6への継続などの学年の持ち上がりの継続もありますが、経営を左右するのは、小学校から中学校、中学校から高校への継続です。 すなわち、中学受験を終わった子供が引き続き、中学部のコースを受講する。 また、高校受験を終えた生徒が今度は引き続いて大学受験に向けてのクラスに継続してくれること。 これが塾にとって、最も経営効率がイイんですね。 もちろん塾は新規で生徒数を確保するため、チラシを打ったりするわけですが、1人の新規の生徒を確保するコストはバカになりません。 新規の生徒を獲得するよりもラクで効率的なのは、 今まで小学部に来ていた生徒を先生が中学部門に継続させる今まで中学部に来ていた生徒を先生が高校部門に継続させる これがもっともコストがかからない、確実で効率的な方法なわけです。 そうするためには、塾自体が「中学受験だけ」とか「高校受験だけ」とか「大学受験だけ」の単体の部門だけでは継続させられません。 そこで、各塾ともそれぞれ小中高のすべての部門を持つようになってきた。 つまり大手の学習塾は少ない生徒をいかに自分の塾の中で完結させられるかがテーマになってきているわけです。 イイ生徒を末永く、つまりゆりかごから墓場までという感じで、自分のところでずっと抱える。これが生徒の囲い込み。 あなたはもう囲まれているかも知れません。 そして、その傾向は、実は塾だけに限りません。 小さいときから大学受験まで、いやこれからは就職して資格を取るときもなんてことになるかも。 ・・・・・・ということで、ここまででもあまりにも長いので、次回、生徒の囲い込みの話から続きでかきます。 どうぞお楽しみに!
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