受験ニュース

塾業界の現状から親は何をすべきか?(2)

前回は塾業界の最近の状況について新聞記事を引用しながら、追ってみました。

今回は、塾業界がどういう方向に進んでいるか?という観点からのお話です。

キーワードは「生徒の囲い込み」。

この「生徒の囲い込み」は、塾だけではありません。

というわけで、まずは大学の話からお付き合いください。

2007年9月22日  産経新聞

同志社、立命館が昨春、小学校を開校し、関大も平成22年度に開設する。

「関関同立」が相次いで小学校を開設する理由を、小学校受験専門教室を開く「能開プレスクール」責任者の喜多輝美さんは「少子化の影響などで、大学側には、小学校からの一貫教育で優秀な子供を取り込みたいという思惑がある」としたうえで、「幼少期から養育費をかけ、吟味して学校を選んでいる親の動向がそれを加速させている」とみている。

関関同立の関西では有名どころが、小学校から囲い込んで生徒を確保する。

また、関関同立は、私立高校の合格水増しの問題のときに話題になりましたが、大学入試センター試験の結果だけで合否を決める入試枠も大いに使って生徒を確保しています。

こうなると、囲い込みどころから、網でごっそりいただきます!ってな感じです。

しかし、そうは問屋がおろさない。

あの「東京大学」が旧帝大や有力私大と組んで全国各地で説明会を開いた。

また、東京大学が来年度から、親の収入が低い学生を対象に授業料を全額免除する制度を導入します。

来年度の入試案内では「世帯の給与収入がおよそ四百万円未満の学部学生の授業料を全額免除」すると。

これも生徒の囲い込みの一貫ですね。

優秀な一番上の層を東大が囲い、次の層をどっかが囲いと大学もどんどん手を打っているわけです。

いずれ大学も雪崩を打ったようにこれに続いていくでしょう。

大学の生徒の囲い込みについては、朝日新聞の特集が詳しいです。

→ 朝日新聞特集〈大学スポーツ考〉

さて、大学の生徒の囲い込みについてみたところで、塾の囲い込みについてみていきましょう。

ちょっと長いですが、様子がよくわかるので頑張って読んでください。

2007/10/13  日経ネット関西版の記事です。

中学受験・高校受験の親技(ストロング宮迫)

中学受験、高校受験を目指す方へ

学校でも、塾でも教えてくれない「勉強の常識」があります。できる子の親だけが知っている「常識」を大きな声で、こっそりあなただけに教えます。中学受験、高校受験をめざす親の方が対象です。中学ならいいですが、高校だと遅すぎ!

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関西の塾・予備校、「小中高一貫」で囲い込み

個別指導で新規開拓も

関西で学習塾各社が生徒確保の取り組みを強化している。大学受験が主体だった予備校が従来より低学年層の生徒獲得に乗り出したほか、中学受験から大学受験まで長期に通い続けやすい環境を整備する動きも出てきた。大学全入時代を控えた浪人生市場の縮小など、少子化の影響で学習塾を取り巻く環境は激変しており、新たな戦略で生き残りを図っている。

ECCは学習塾事業で主力の高校生部門の生徒を確保するため、小・中学生部門を強化する。大阪府南部に直営校9校を展開している小・中学生対象の学習塾「ECCスタディア」で2010年度からフランチャイズチェーン(FC)制度を導入。関西一円と中部でFC50校を設立する計画だ。12年度にはFCで2500人の生徒確保を目指す。

ECCは関西などに大学受験対策のECC予備校を22校設置している。予備校の近隣に小・中学生対象の塾を開校することで、将来の予備校の生徒確保につながるとみている。個人経営の塾などは大手予備校との競争激化で経営状態が苦しいところも多く、こうした塾をFCの形で傘下に収めるのも狙いだ。

新設2倍ペース

関西を中心に「第一ゼミナール」や「ユリーカ」など123校の学習塾を経営するウィザスは中学受験から大学受験までのコースを1つの校舎に集めた複合型校舎を増やす。中学受験から大学受験まで一貫して面倒を見ることをアピールすることで、長期に継続して通う生徒数を伸ばす。

大阪府内の人口密集地を中心に従来の約2倍の年5〜7校のペースで複合型校舎を新設する計画。10年3月期までに少なくとも現在の2.3倍の21校に増やすとしており、複合型校舎の増設をけん引役に生徒数も現在の1.4倍の2万1000人にする考えだ。

京都を中心に「成基学園」を運営する成基コミュニティグループ(京都市)は、全国大手との提携で生徒確保を図る。大手予備校「東進ハイスクール」を展開するナガセと提携し、京都府と滋賀県で6校の「成基大学受験東進衛星予備校」を展開。主力の小・中学生部門から継続して通う生徒の増加を見込む。

10年で13%減

総務省の人口推計によると、近畿2府4県での19歳以下の人口は、06年までの10年間で13%減の約390万人に縮小している。このため、既存の生徒の囲い込みだけでなく、今まで塾に通っていなかった生徒層の獲得に向けた動きも広がっている。

関西で「能開センター」など100校の学習塾を持つワオ・コーポレーションは、学校の部活動などで塾に通えない生徒の取り込みを急ぐ。生徒が都合の良い時間に校舎で映像授業を受講する個別指導システム「マイ速」に対応した校舎を年20校程度新規開校。5年後をめどに、マイ速の受講生を現在の4倍の4000人に引き上げる。

阪神間などで学習塾を経営するアップは受験を目的としない生徒を取り込む。幼児から小学校低学年を対象に科学実験を教える「サイエンスラボ」や「こどもカレッジ」を今年度中に1校ずつ追加する予定。「幼児期の才能教育を目指す親の需要を取り込みたい」(尾上嘉基常務)と、幼児向け英会話スクールの増設も検討している。

文部科学省の「子どもの学習費調査」によると学習塾への支出額は増加傾向にある。1998年から04年までの期間では、小学校から高等学校までの各区分とも学習塾への年間平均支出額が増加しており、学習塾各社の競争はさらに激しくなりそうだ。

関西が中心の話ですが、首都圏も同じ。首都圏、関西圏がそうなれば、地方も当然同じような傾向をたどります。

実際、地方でも大手の学習塾は、記事にあるような総合塾にどんどんなっていっていっています。

その総合塾になっていく過程の中で、いろんな道を塾は模索しています。

単体で総合塾を目指しているところもあれば、他の塾と提携して連合軍として総合塾を目指す塾もある。

小中学部での連携を見せているところもあります。

株式会社全教研(本社 福岡市)と株式会社昴(本社 鹿児島市)は、小学生及び中学生を対象とした模擬試験を共催して実施することを合意いたしました。

沖縄県を除く全九州を網羅し、両社併せて126教室、受験者数2万人を超える九州最大規模の模擬試験が実施されます。

個別教室を一挙に30教室開校するところも・・・

2007年4月25日 NIKKEI NET

高校生向け事業拡充、「大学全入」に対応

城南進学研究社、個別指導を強化

個別指導を強化城南進学研究社は個別指導教室を今年度に約30教室開校する。今春に志願者数と入学者数が一致する大学全入時代を迎え、予備校や塾業界の高校生部門の経営環境は厳しい。各社とも受験生を囲い込もうと懸命だ。

個別指導は基本的に学生アルバイトに任せる形で運営できるので、これからますます新規参入が増えていくでしょう。

前回すでに書きましたが、今の時代が難しいのは、自分たち塾の得意な分野、例えば大学受験とか高校受験とかだけでは、十分な生徒数を集められないということなのです。

他塾が小学生から中学生へ、中学生から高校生へと継続して塾に通うような囲い込みの作戦を実行している中で、新規に高校部門から生徒を確保するのはなかなか大変なわけですから。

では、総合塾になっていくときに、なにが大変なのか?

一番の難題は先生の確保です。

総合塾としての体裁を塾が整えても、イイ先生がいなくて、どんどん生徒が辞めていくようだとどうにもなりません。

ただイイ先生がその辺にゴロゴロいるわけじゃない。

また、いくら研修教育しても、イイ先生を育てるのは、かなり難しいのです。

総合塾に向かっている。でも、先生の確保が難しい。

そこで方策として出てくるのがこれです。

2007年4月25日 NIKKEI NET

市進、映像で4000講座

予備校や進学塾が高校生向けの事業を相次ぎ拡大している。市進は録画した授業を生徒が好きな時間に受講できる映像配信授業を本格的に開始。

映像授業では、すでに東進ハイスクールが先頭を走っているわけですが、イイ先生の授業というのは、はずれがない。

となると、イイ先生が授業した映像を見るという映像配信授業はこれからもっともっと増えていくでしょう。

極端な話、映像配信授業なら、優秀な先生が各教科で1人いればいいわけですから。

これらの現象は、「先生の確保」の問題です。

さらに通信教育の進研ゼミZ会は、通信教育だけでは満足できない層に授業を提供し始めました。

2007年11月1日 山陽新聞

首都圏の予備校を買収 通信教育ベネッセ通信教育大手のベネッセコーポレーションは1日、首都圏で予備校を展開する「お茶の水ゼミナール」(東京)を買収した、と発表した。

難関私立大を中心に合格実績のある同ゼミナールのブランド力を本業に生かすとともに、通信教育だけでは満足できない顧客に予備校での授業を提供することでサービス向上につなげる。

2007年9月 NIKKEI NET

Z会がネット講義、まず大学受験向け

通信添削のZ会(静岡県長泉町、加藤文夫社長)は9月、インターネットを利用した「遠隔講義」を始める。

大学入試センター試験対策を狙ったもので、英語や数学など16講座を用意。Z会が関西圏で展開する塾の講師らが同社の市販参考書をもとに指導する。主力の通信添削の受講者減に対応。受験の老舗ブランドとしての総合力を武器に巻き返す。

2007年7月9日

「Z会」中学コース教材に「学研教室」で取り組む

中学生向け「学研教室・Z会コース(仮称)」テスト運用スタート 株式会社 学習研究社と株式会社Z会は、Z会および学研教室の中学生会員を対象とした、公立上位高校合格を目指す「学研教室・Z会コース(仮称)」の開設に向けて、その事業性を判断するための共通の委員会を設置、2008年度からの本格展開を視野に収めて、パイロットテストを含めた活動を始めることになりました。

そして、業界第2位の東進ハイスクールを運営するナガセが先日、学習塾を組織化し、四谷大塚式を全国展開すると発表しました。

2007年10月17日 日本経済新聞

大手予備校、東進ハイスクールを運営するナガセは全国の小学生向け学習塾の組織化に乗り出す。昨年買収した老舗学習塾、四谷大塚(東京・中野)の指導法を活用。四谷大塚のテキストの使用やテストへの参加ができる加盟塾を募集する。老舗のブランドを活用することで、少子化が進む中でも加盟校全体として生徒を確保する。初年度200塾、300教室程度の参加を見込む。

加盟塾を「四谷大塚NET(ネット)」として組織化する。首都圏の名門中学受験に強い四谷大塚は「予習シリーズ」などの有名テキストや、生徒の理解度を確認する週例・月例テストで定評がある。

加盟塾はテキストに基づく授業ができ、定例テストにも参加できる。難易度の高いコースから始められない生徒向けに基礎力を重視した新コースも設置する。

そのナガセ率いる四谷大塚がこの11月23日に小学校3・4・5年生を対象に「日本初!全国統一小学生テスト」と称したテストを実施します。

試験会場は全国47都道府県で1000教室と謳っています。

これはなにを意味するのか?

大学受験の東進ハイスクールの映像配信授業をフランチャイズ運営している全国の塾が「生徒の囲い込み」を狙って、下の学年である中学受験に雪崩を打って参入してくるということです。

ナガセは総合塾をはじめから構築することなく、すでにある場所、教室で連合体の小中高の総合塾を一気に構築できるわけです。

中学受験は、誰でもできる分野ではないですが、中学受験で現在不動の位置にあるサピックスや日能研にも大きな影響を与えていくでしょう。

こんな話は関係ないと思う方も多いことでしょう。

塾には一切行かない!という方は関係ないでしょう。

でも、どこかの塾に行くとすれば、少しずつでもこうした市場環境の影響を受けるだろうと思います。

例えば、塾で「○○講座を受講する」。

そのときに一番最初に話を聞いてくるのは子供です。

「受講する!」そう子供は思って帰ってくるはずです。

子供は先生の話でほぼ完全に落とされて家に帰ってくるわけですから。

問題は、その講座は、

「あなたの子供に必要なのか?」

ということです。

ここまでの記事にもありましたが、少子化戦国時代を迎えて、塾は生徒数が減った分を生徒一人当たりの単価を上げることで、今までの売り上げを維持しようと努力します。

単価が上がったけれど、成果もそれに比例して上がっている!

それならいいんです。文句はない。

でも、支払う金額は上がったけど、成果は今までと同じでは、もったいないと思うわけです。

皆さんは囲い込まれる側です。

今回の話で塾業界の大きな流れは理解していただけたと思いますので、それを基礎知識として、どこに属し、どこの囲みにいるのかをぜひ一度考えてみてください。

最後に、今年表に出てきた私立高校の受験料を負担した上での大学合格実績水増し問題。

一人の優秀な生徒で大きく見せることができた実績が実数での評価になっていきます。

来年の春の大学実績の発表で今までと評価が変わる学校がいくつも出てくることでしょう。

そして、この性質の問題は、いずれ塾の合格実績稼ぎ、合格発表のやり方にも少なからず影響を与えていくはずです。

投資も塾もあらゆることが自己責任といわれる時代だからこそ、しっかり目を開いて耳を傾けて見ていくことが親には求められているのではないでしょうか。

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