坂田ジュニアゴルフ塾に学ぶ > その37「忍耐こそ成功の秘訣なのです」

その37「忍耐こそ成功の秘訣なのです」

坂田信弘著「山あり、谷あり、ゴルフあり」より

「誰でも良かった...」、と言う。

最近頻発する、無差別通り魔事件の犯人たちに共通する供述だ。凶悪犯罪は、昔からあった。しかし昔は犯人なりの、もっと明確な犯行動機があったように思う。しかし今、凶行に走らせる動機は極めて不透明。「むしゃくしゃして」「大きな事件を起こせば注目されると思った」では、あまりに幼すぎて理解しかねる。

私には、そうした反社会的犯罪の根本原因がどこにあるのかわからない。

ただ一つ言えることは、人間が生きていくうえで、何が一番大切かといえば、それは忍耐力と思う。

忍耐力がない、耐性が養われきれぬうちに年齢だけ成人し、社会人として世の中に送り出されたら、どうなるか。

仕事先で思いどおりにいかぬことがある。
嫌がらせを受けた。
つまらない。
その解決手段が、その職を辞めること。

そして次の仕事に向かう。
だが新たな職場でも、思いどおりにいかない、つまらないと言って、また辞める。

その繰り返しのその果ての凶行とは、ちと論理が飛躍しすぎか。

でもそう思えて仕方ないのです。

社会の仕租みからして、本当に意欲の持てぬ職業が増えているのかもしれないが、「嫌だから辞める」では、物事は何一つ解決しない。それだけは間違いないことと思う。

世間のことはわからぬが、ことゴルフに関しちゃ、忍耐力こそ成功の秘訣です。

その忍耐力の源となっているのが、根気なんですよ。

根気は生まれながらに人間に備わっているものじゃない。これは大地を耕すように一鍬ずつ入れながら作るものなんだ。その始まりが、箸の持ち方から入る食事の作法であり、鉛筆の持ち方、そして幼稚園や小学1年の頃に始めるお稽古事なんです。
 
いろんな稽古事がある。
週に五日、算盤やったり、コーラスやったり、バレーだったり、水泳だったり。

そういう子供は、一見恵まれているようでいて、実は根気というものを耕す機会を失っているのです。人間の能力、同時にいくつものことを成功させるのは困難と思う。レベルが高くなるほどに複数の成功の可能性は低くなっていこう。

一つしかできない。上手くいって二つまでだ。その一つを徹底的にやればいいんです。

週に五日、5種類の稽古に通ったら、子供だってどれに気持ちを入れていいかわからなくなる。稽古事を数多く与える親は子供がその稽古事、嫌だといえば、さっさと辞めて次のお稽古を見つけてくるだろう。

先生との相性が悪いと言ってはお稽古先を変える。これじゃね、とても根気は耕せん。ましてその先の忍耐力など、とてもとても養えたもんじゃない。根気畑に忍耐の花は咲くものだけど、硬い畑に咲くは小さな花ばかり。

大きな花を咲かせたけりゃ根気畑を耕やさなきゃならんのに、その耕す機会が失われていく。

だからお稽古事は一つでいい。でも一つを絶対に辞めさせない。
6年は続けさせたい。6年間も同じコトを続けさせればね、たとえそれを辞めたとしても、その子には財産が残る。忍耐力を生む、根気というとっても大事な財産が残るのです。好き勝手が巡る世の中なんてありやしない。

思いどおりにならないから嫌だという奴は阿呆だ。
その阿呆のやることに世間が迷惑している昨今、耐性の薄さ弱さが強く問われているように思うのです。

大人は、耐性を身につけている。現代社会でその耐性が備わっていない成人が増えたとすれば、それ
は親の責任である。幼年期から少年期にかけて6年間、少なくとも3年間は同じことさせなきゃいかん。

入塾選考会面接時に聞く、これまでお稽古事をいくつやってきたか、と。すると自慢げに指祈り始める親がいる。

それじゃ、ダメなんですよ。

いくつものお稽古先がある、何度もお稽古先を変える、あるいは種類を変えていたんじゃ、その子の根気は育たない。当然、感謝の気持ちなどはどこにもない。誰かを信じる気持ちも薄らぐし、お稽古先の先生や仲間への気持ちも薄くなる。あくまで自分本位な考え方が根付いてしまう。

周囲に目を配ることもなくなれば、平気で周りを裏切るようにもなる。これはね、子供ではなく、まず親ですよ。親が子供の人間関係を裂き、先生や仲間との信頼や期待を裏切らせてしまう。我が子ばかりを見ていると、人様の持つ夢も情も寛容も優しさでも、見る事のできぬ人間となっていくのは確かだろう。

とはいえ子供は、中学生にもなれば親と一緒にいるよりも、他の人間といる時間の方が長くなる。

そうなれば、自ずと世間に育ててもらわなきゃいけなくなる。その時に、根気がない子じゃ、世間にしがみついていられない。

すると、どうなるか。

人の集団は端から競争力を持たぬ人間となっていく。そこのところ、親は十分に認識しなきゃいけないはずだ。

だからね、親にも子にも、覚悟がいりますよ。今の時代、何でもできます。それでもあえて、一つに絞り込まなきゃいけないのだから。

ある時、塾生に聞いてみました。

坂田塾の他に稽古事しているかと。

するとね、やっぱり二つ三つと掛け持ちしている子がいた。
でも次第に他を辞めて、ゴルフー本に絞っていくことができれば根気は育ちます。

辞めることができずに隠れてやっている子は、結局、何にもならずに退塾していった。中途半端すぎたん
です。

やはり親にも子にも覚悟がいる。

小4から中3まで、最低6年問、坂田塾でゴルフをする。そのためには、何かを捨てなきゃいけない。覚悟とは、他を捨てることだと思う。そういう覚悟を待って入塾してきたら、ゴルファーとして成功を収められます。プロゴルファーを目指すなら、プロになれる。それは先輩たちが証明してきたことです。

私は坂田塾というゴルフ塾を主宰しちゃいるが、世の中には他のスポーツも芸事も何だってある。何でも
いい。ただね、幼年期から少年期、そして青年期の間、一つ事をやり抜いて欲しいのです。しがみつきは、大切ですよ。

ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とすというが、突き落とされた子ライオンは、崖の岩肌をつかむ爪を持たない。だから谷底だ。そして谷底で爪を磨き、脚力を鍛えて頂きを目指す。用は忍耐だ。

人もそれだと思う。忍耐の力、老いなければ70歳も青春。挑戦の力を持ち続けることできると思うのです。

今、私は子供の根気を作るは親の役目、養うも親の役目。そして根気を鍛えるのは世間の役目という気がしているのです。