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岩手日報【日報論壇】【不合理な尖閣棚上げ論】

「英語のエキス」の著者佐香武彦さんが2013年3月8日の岩手日報【日報論壇】に投稿された内容です。

不合理な尖閣棚上げ論

 かつて田中角栄・元首相が中国の周恩来・元首相に「尖閣についてどう思うか」と迫ったことがある。彼にはかなり自信があった。その時点で周元首相には自信がなかったから「そのことは今は話したくない」と返した。自信があるなら「尖閣は中国のものだ」と言ったはずだ。彼は「石油が出るから問題になった。石油が出なければ」と続けていた。これが本音だろう。

 鄧小平・元副主席にしてもそうだ。「この世代の人間は賢明ではない。次世代は我々より賢くなるだろう」などと先延ばしをして逃げた。彼に自信があるなら、やはり「尖閣は中国のものだ」と言ったはずで(「あわよくば」と)可能性を将来に残しただけだった。

 それなのに日本人の中には同じ土俵上にいるかのごとき考えをして、しかもそれが平和的な解決策だと思っている人がいるようだ。日本には明らかな「理」があるのだから棚上げにするいわれはどこにもない。日本側が棚上げにしたいなどと言い出すことは先方の強引なやり方に屈したような印象を与える。

 また、国有化する前、外資が旧地主に「尖閣を売ってくれないか」と交渉していたと聞く。中国のものではないと広く知られているからこその交渉だ。

 尖閣は日本の領土だと明言している一人に台湾の李登輝・元総統がいる。かれは「尖閣列島は日本の領土であり、道理に合わないことを言う中国に譲歩する必要はない。中国の主張は美人を見て自分の妻だと言っているかのようだ」と言っていた。これは極めて明快な言葉だ。

 中国の南京市には役者に演じさせ、多くの合成写真を作って展示している「架空話館」がある。あの話(南京大虐殺)を否定する書物も数多く出版され、内外の歴史学者によって看破されたはずなのに影響は中国国内だけでなく、日本にまで及んでいるのだから、その「迷作」ぶりも、また長年にわたる宣伝活動や反日教育も相当なものだ。先ごろも首相経験者がいとも簡単にだまされて訪れたようだが、開いた口がふさがらなかった。

 「棚上げ論」に左右されるということは、これら数々の不合理な事柄を是認することであり、自らの手で「道理」を壊すことなのだということをよく考えてもらいたい。

 中国はレーダー照射のように「あるものもない」と言う。はてさて国際社会から受け入れられるのは、いつのことだろう。それには、まず日本人の全員が賢くなることが不可欠だ。