英語のエキス > 鉛筆の硬度表示「F」について三菱鉛筆株式会社から回答

鉛筆の硬度表示「F」について三菱鉛筆株式会社から回答

佐香武彦さんからいただいた手紙を元に鉛筆の芯の「F」は「firm」って本当?という記事をアップしましたが、それに関して、山岸勝榮先生のサイトに以下のような記事がありましたのでここに紹介します。


山岸教授の日英語サロン
2012年9月24日『鉛筆の芯の硬さとFの略号(続)』
2012年8月24日『鉛筆の芯の硬さとFの略号』

私どものほうでは三菱鉛筆株式会社に問い合わせをしておりましたが、10月に途中経過の報告が、1月には最終の報告を文書でいただきましたので、以下に紹介します。


まずは三菱鉛筆株式会社から届いた経過報告の文書です。
image22222.jpg

以下、上記画像の文章です。

平成24年10月16日
三菱鉛筆株式会社
お客様相談室

鉛筆の硬度表示「F」の意味について(経過報告)
拝啓 時下ますますご清样のこととお喜び中し上げます。
平素は弊社品へ格別のご高配を踢り厚くお礼中し上げます。

さて、この度ご質問いただきました「船筆の硬度表示『F』の意味」 につきまして、次の通り経過報告を中し上げます。

鉛筆硬度「F」の意味は、Firmもしくは、Fineのどちらの説もあるようです。
Firmにつきましては、今から100年以上前のドイツの A.W.ファーバー社のガタログに、 "F FIRM"と書かれているものがありますため、日本においては、こちらの表示方法が伝わってきたものと考えられます。下の写真の赤枠部をご確認ください。

(写真省略)

Fineについては、同著に「尖った芯」を意味しているとの記述もありますが、その根拠が示されておりません。現在文献を深しているところで、明確なご回答ができる段階にはいたっておりません。調査結果が出次第、あらためてご報告申し上げます。

つきましては、事情ご賢察のうえご寛容賜りますとともに、 今後ともかわらぬご愛顧の程、 宣しくお願い申し上げます。

敬具

 
 
 
この経過報告のあとに三菱鉛筆株式会社から届いた最終の報告が以下です。
image19301250136.gif

以下、上記画像の文章です。

平成25年1月17日
三菱鉛筆株式会社
お客様相談室

鉛筆の硬度表示 「F」の 意味について(ご報告)

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は弊社品へ格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。

さて、 この度ご質問いただきました「鉛筆の硬度表示『F』の意味」 につきまして、次の通りご報告を申し上げます。

FirmとFineのどちらが正しいのか
先日の経過報告に記しました通り、鉛筆硬度 「F」の意味は、「FirmもしくはFine」の両説があるようで、また、Firmにつきましては、100年以上前のドイツの A. W. ファーバー社のカタログ掲載の事例が、ヘンリー ・ペトロスキー著の鉛「筆と人間」 (渡辺潤 岡田朋之訳 晶文社 1993年発行) の中でございました。

その後、各種文献を探しましたが明確な記述がなかったため、 「鉛筆と人間」の著者に「F」の由来を質問したところ、次の回答を受けました。
-------------------------------------------
残念ながら、 はっきりした由来はわかりません。
最初に、鉛筆の硬度として、「H」と「B」という硬度があり、その間の硬度として、「HB」と「F」が生まれましたが、「F」の表記は製品 (各メーカーごと) によりまちまちで、 Firmと しているメーカーもあれば、 Fine pointsとしているメーカーもあり、どこがオリジナルか特定することは困難です。
-------------------------------------------

日本はなぜFirmなのか
日本鉛筆工業協同組合発行の「鉛筆組合100年の歩み」 には「ドイツは最も早く鉛筆生産を工業化した国」 「国産鉛筆の黎明期に手本としていた国はドイツ」 といった内容が記されておりました。

また、弊社の社史においてもノウハウを習得するために社員をドイツヘ留学させた記録がございました。このような歴史から日本においては 「ドイツで表記されていたFirm」が定着したものと推測されます。


現時点での情報からここまでの内容となりますが、 これをもちまして弊社からの回答とさせていただきます。今後ともかわらぬご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。

敬具

 
 
最後までご丁寧に回答いただきました三菱鉛筆株式会社のお客様相談室の方々には心より感謝申し上げます。お手数をおかけしました。ありがとうございました。