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岩手日報【日報論壇】【がれきへの偏見やめて】

「英語のエキス」の著者佐香武彦さんが2012年4月5日の岩手日報【日報論壇】に投稿された内容です。

「がれきの偏見やめて」 佐香武彦

 私達は放射線というものに、あまりに振り回されているのではないだろうか。ごく微量の線量しか計測されない「がれき」の受け入れが、潔癖主義や事なかれ主義、あるいは偏見のようなものによって阻害されているのではないかと思えてならない。

 私達は平素、宇宙から降り注いでいる宇宙線も浴びている。ということは、「放射線を出すもの全てが怖いのではなく、放射線がある数値を超えた場合には要注意」と思って差し支えがないのではないだろうか。

 広義には電磁波も放射線の一つなのだから、がれきの受け入れに反対する人たちには、「携帯電話機は電磁波を出すから持つべきではない」と言っているようなものだ。赤外線や紫外線も周波数が違うだけで電磁波の一つだ。こうして見てみると、私達はすでに長年にわたって、老いも若きも、子どもさえも放射線と接しているのがわかる。

 石原東京都知事は「同胞が困っている時には、助けるのが当たり前だ。何も高い数値の放射線を出しているものをばらまくわけではない」と強く言って反対者を一喝し、早くから受け入れていた。強いリーダーシップと見識に頭が下がる。

 大震災以降、善意の人から寄せられた厚意は筆舌に尽くせぬものだった。ボランティアの数も相当なものだった。支援されている側の一人であっってみれば、感謝し続けていくことだけ心がけていればよさそうなものだが、それでも、ついつい「お天道様から笑われている面もあるのではないかな。こんなことでいいのかな」と思ってしまう。

 刑務所や火葬場の建設は嫌われ、「ここに持ってくるな」と言われるそうだ。トイレは汚いものかもしれないが、どこの家でも作る。それと同じではないか。受け入れ反対者はどんなもっともらしい理由を付けてみても、厳しいようだが、利己主義者のようにしか映らない。

 ありがたいことに東京都の他にも東北や静岡県島田市などが受け入れてくれた。他人に頼ってばかりということには反対だが、全国の自治体が、がれきを受け入れてくれれば、そのおかげで、被災地の復興に弾みがつくことは間違いない。

宮古市 非常勤講師 72歳


 
 
 
NHK時論公論 「がれき受け入れ"拒否"の理由」 2012年03月22日 (木)
 
 
 
2012年4月17日 産経新聞
22自治体「協力・検討」 がれき受け入れに前向き回答 


東日本大震災で発生したがれきの広域処理について、政府が受け入れを要請した35道府県と10政令市のうち、17道府県と5政令市が具体的に協力・検討すると回答した。17日の関係閣僚会合で細野豪志環境相が報告した。野田佳彦首相は前向きな回答をした自治体を最優先に、受け入れの調整を進めるよう指示した。

環境省は3月16日に野田首相名の文書で、受け入れを表明していなかった計45自治体に協力を要請。4月6日までに検討結果の報告を求めていた。

同省は協力・検討すると回答した自治体を3つに区分。(1)具体的に受け入れ量を回答した=富山、石川、山梨3県と北九州市(2)受け入れを検討中の市町村名を挙げた=新潟、岐阜、滋賀、京都、鳥取、福岡の6府県(3)「4月中旬に市町村会と合意を目指す」など受け入れに向けて具体的な方針を回答した=8道県と4政令市となっている。

広域処理を求めているのは岩手、宮城両県の計400万トン。新たな検討量は計22万トンに上り、これまでに受け入れの見通しとなった分と合わせると162万トンまで増えた。

回答は自由記述形式で、3区分に当てはまらなくても「前向きに検討する」(奈良県)、「可能な範囲で対応したい」(福井県)と記入した自治体もある。閣僚会合では、がれきを原料として再生利用することをセメント会社など6業種70社が前向きに検討していることなども報告された。


 
 
 
2012年04月20日 朝日新聞
宮古からがれき受け入れ 苫小牧市今夏にも

■岩手・宮古から木質がれき受け入れ
 震災がれき受け入れについて自治体によって温度差が出ている中、苫小牧市は岩手県宮古市から受け入れる方向で調整を進めている。木くずなどを対象に建材としての再生利用を想定、早ければ夏にも受け入れを始める方向で調整中で、道内での受け入れ第1号となる可能性がある。

■建材に再生、返送へ
 苫小牧市の岩倉博文市長は今月3日、宮古市を視察。市長室で山本正徳宮古市長と面談し、「さまざまな手続きはあると思うが、スピーディーな形でやっていきたい」と表明した。山本市長は「県内での処理に努力しているが、量が多くなかなか進まない。声を上げて頂けて本当に助かる」と謝意を伝えた。

 苫小牧市が受け入れを検討しているのは木質系がれき。市内の民間業者が建材に使われる木質ボードとしてリサイクルし、宮古市に再び送って家屋建設の材料に活用する想定だ。

 宮古市内のがれきは推計で71万5千トン。震災前に処理していた一般廃棄物の35年分に相当する量で、大半は市内3カ所の仮置き場に集められている。がれきについての岩手県の基本方針は県内処理で、宮古市でも市内の仮設焼却炉などで処理しているが、市によると処理できたのはまだ全体の5%に満たない。

 一方、苫小牧市には放射能汚染を不安視するメールや電話などの意見がこれまでに約1200件届いている。市内の四つの市民団体でつくる「震災瓦礫(がれき)を考える市民ネット」は11日、市民の意見を聞くよう求める緊急要望書を岩倉市長に提出。同ネットの舘崎やよいさん(70)は「広域処理が国の政策だから従うのではなく、地域のことは地域住民で決めるという原則に立ってほしい」と話す。

 環境省のガイドラインによると、がれきを再生利用する際の放射性セシウム濃度の基準は「1キロあたり100ベクレル以下」。製品として広く市場に流通する可能性があるため、焼却処分のがれきの安全基準「1キロあたり240~480ベクレル以下」よりも厳しい数値となっている。

 がれきを受け入れている東京都が昨年7月と11月、宮古市の仮置き場の木くずを測定した際のデータは、1キロあたり71~36ベクレルと、いずれの基準も下回った。環境省の測定では、放射性濃度が不検出というデータも多い。

 このため苫小牧市は安全性の基準はクリアしているとみているが、専門家の意見も踏まえたうえで、国や道の担当者も交えて市民に説明の場を設けることを検討している。5月上旬にも市の安全性に対する考え方を公表する見通しだ。

 道によると、道内でがれき受け入れに前向きな意向を持っているのは25の市町村と一部事務組合。被災地の自治体と具体的な協議を進めていることから、苫小牧市が道内で受け入れ第1号の自治体になる可能性が出ているという。 (深沢博、杉村和将)

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■安全基準の考え方 市長「来月に公表」
 震災がれきの受け入れ方法や市民への説明などについて、岩倉博文・苫小牧市長に方針を聞いた。

 ――市としてがれきを受け入れる理由は
 復興の妨げになる災害廃棄物の処理に向けて支援できることは支援したい。もちろん、放射能汚染は断固許さない。しかし被災地の安全が確認された廃棄物すべてを拒否する姿勢は取らないということ。国は3年で処理すると言っているが、被災地の人の気持ちを考えると長引かせるべきではない。

 ――安全性について心配する声がある
 宮古市の廃棄物の多くは放射性物質が不検出で、大気中の放射線量は非常に低い。ただ、心配する市民がいる以上、あいまいな説明はできない。「宮古の木質系廃棄物の再生利用」という点に条件を絞り、専門家の意見を踏まえて5月の大型連休明けに安全基準に対する考え方を公表する。反対している市民団体の方にはこちらから足を運び説明したい。

 ――他に課題は
 国の処理基準では民間連携の再生処理まで細かく規定していないので、処理費用を含めた法的位置付けをどうするかという点がまだ残っている。総量や運搬方法もまだ決まっていない。道と県との間での調整をお願いしており、まとまれば試行という形で進めたい。